こんにちは!risachicaです。
最近急に秋めいてきましたね。
気温がちょうどよくて、心地いいです。
今日は、医療データベースに興味がある私が読んですごくおもしろかった本を紹介したいと思います!
今日紹介する本「医療ビッグデータがもたらす社会変革」
本書情報について
医療ビッグデータがもたらす社会変革 | 中山健夫, 21世紀医療フォーラム |本 | 通販 | Amazon
医療ビッグデータがもたらす社会変革
監修:中山健夫
価格:1800円(税込)
出版社:日経済BP社
出版:2014年
本の著者情報
監修の中山健夫教授は、これまで国立がんセンター研究所がん情報研究部室長等歴任され、その後京都大学の医学研究科の教授として健康情報学分野の研究を専門にされており、これまでも健康、疫学解析、医療情報学から思考法まで数多く本を出版されています。
健康情報学 | 京都大学 大学院医学研究科 社会健康医学系専攻
情報(information)とは、「(意思決定において不確実さ(uncertainty)を減ずるもの 」(シャノン) と定義されています。本分野は、健康・医療に関する問題解決を支援する情報のあり方を追求し、情報を「つくる・つたえる・つかう」の視点で捉え、より望ましい環境の整備を推進する研究と実践に取り組むものです。その対象は、医療者だけではなく、患者・介護者・支援者などの医療消費者全般を含み、また個人から社会レベルの意思決定の支援を想定しています。従来の公衆衛生や臨床の枠組みにこだわらず、健康や医療に関わる情報を横断的に扱い、Evidence-based Healthcare(診療ガイドライン、システマティック・レビュー、決断分析などを含む)、情報リテラシー、e-ヘルス、ヘルス・コミュニケーション、個人情報保護やアカウンタビリティの情報倫理などの教育・研究を進めています。
大学のHPを見ると、データの利活用が急務の今まさに求められている、すごく興味深い研究をされていますね!
アカデミックな研究に終始することなく、実際の社会での実践と活用を目指した取り組み方をしていらっしゃるところが素晴らしいなぁと思います。
本の目次
第1章 データ、情報、知識、それぞれの持つ意味
「ビッグデータ」に向き合うために
データ解析から情報が生まれる
データ解析の方向性とリスク
不確実性を減らすことが情報の役割
正しくデータ解析をするために注意すべきこと
知識とは情報が構造化された総体
第2章 ビッグデータとは何か
未来の情報を確実に知ることは永久に不可能。過去から未来を予測するのは可能。
爆発的に増え続ける世界のデータ量
ビッグデータ、その正体は「構造化」されていない多種多様なデータ
ビッグデータの特徴ー4つのVー
検索データが予測するインフルエンザの流行
ビッグデータは「因果関係を問わず」ひたすら予測する
医療におけるビッグデーター因果関係は不要かー
全量解析が買える世の中の見え方
ビッグデータが実現する医療
真に意義のある医療ビッグデータに向けてー個人識別番号の活用ー
第3章 医療ビッグデータを考える
DPCは、医療機関の実態を映し出すベンチマーキングのツール
東京医科歯科大学大学院 医療政策情報学分野教授 伏見清秀 氏
臨床データと他のビッグデータとの連携で患者視点に基づく治療を
東京大学大学院医学系研究科 医療品質評価学講座教授 宮田裕章 氏
医療ビッグデータと臨床疫学が拓く新しい医学研究の世界
京都大学大学院医学研究科 薬剤疫学教授 川上浩司 氏
医療ビッグデータ+ゲノム解析でわかること
京都大学大学院 医学研究科付属ゲノム医学センター長 松田文彦 氏
第4章 海外の医療ビッグデータ活用事例
医療ビッグデータ活用においては”周回遅れ”の日本
DB構築と民間活用がすすむ海外事例
欧米各国のDB整備状況(米国、スウェーデン、英国、デンマーク、オランダ)
アジア各国の医療ビッグデータ整備状況
海外では医療ビッグデータが意思決定に活用され、患者や社会全体の役に立っている
医療ビッグデータ活用により、医療費の適正化をめざす
患者目線で、より質の高い治療を特定~米国CERのケース
医療ビッグデータから治験を創出できる人材育成の必要性
第5章 有識者に聞く医療ビッグデータ構築・活用の課題
京都大学外学院医学研究科 客員教授 本庶祐 氏
慶応義塾大学薬学部 医薬品開発規制科学講座教授 黒川達夫 氏
国立情報科学研究所所長 東京大学教授 喜連川優 氏
アイ・エム・エス・ジャパン代表取締役社長 湊方彦 氏
第6章 医療ビッグデータ。その価値を最大化するために。
医療ビッグデータがもたらす恩恵
整備がすすむ医療系データベース
国民共通IDの医療利用に向けて
急務となる「ヒューマン・データサイエンティスト」育成
おススメポイント
この本では、医療ビッグデータという、ビッグデータという言葉がバズワードとして使われていた頃の医療における現状と、今後必要な対応について冷静に書かれています。
本の中で、薬剤疫学、薬剤の副作用データを抽出解析して意味付けを行う際に潜む危険性などを強く警告されていて、データは爆発的に増加しているけれどバイアス等の危険性があり、医療データの取扱いには人の命がかかっている以上、徹底的に自覚的であるべき、と警告されています。
また、そのためデータの取り扱いには疫学、生物統計学、情報学、バイオインフォマティクス等の広い知識が必要となり、その人材の不足は深刻な問題であると語っていらっしゃいます。
まさに、これからビッグデータの利活用をすすめて医療に役立てていくために、現場の人間にはデータベースと収集システムの構築のために幅広い知識とリテラシーが求められると感じています。
今も日々勉強するにつれ、業務の傍らどんだけ勉強すればいいんだ?と思いますが、
先日出席した医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団の講演の際に元Pfizer、現BeiGeneの慶徳先生が「これから安全性情報に携わる人には覚悟がいる」とおっしゃっていたのを思い出して、「本当に……」と思います。
逆に、スピード早く今の製薬業界の変革の流れの中にいて、幅広い見識が求められる業務でやりがいがあるとも言えますね!
こちらの本では、ビッグデータと言われる爆発的に増えていく情報量の中の医療に関連するものについて、その取扱いの注意、これから医療上有用な情報の意味付けを読み解く上で必要な知識と理解、各国の医療情報集積と解析のために現存発達しているの医療システムや一元化のリンク状況等と同時に、当時から日本で行われている地域の健康情報追跡プロジェクトにも焦点をあてています。(ながはま0次予防コホート研究事業)
本文中で、日本の医療情報収集体制とその解析技術の進歩と浸透は周回遅れと表現されていましたが、今もその差が縮まったようには見えず、利活用については変わらず停滞している感はあります。
ただ、実際に薬事申請でデータベースを用いるための規制の整備がすすんできて、データベース調査実施の割合も増えてきており、ここ1,2年でスピードはあがってるかな?とも思います。
現場の人間として、憂慮する部分はありますし焦燥感を感じることもありますが、国主導で法令や規制、システムの整備を行うと同時に、他国の例のように民間からも現状を動かす動きをしていくことは必要かなと思います。
この中山先生の本がとてもおもしろくて、他にもEBMの翻訳や、治療方針決定の際の意思決定、合意形成のSDMの入門から実践までを書いた本もあるので、読んでみたいです!
ではでは。
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